蜜月まで何マイル?

    “代わり映えのないことには”
 


やはりやはり、といいますか、相変わらずと言いますか。
すったもんだの大騒ぎを追い風にするかのようにして、
因縁のシャボンディ諸島を華々しく出港した、新生 麦ワラの一味であり。
何と言っても“2年”という歳月を、
世間から身を隠していたってだけじゃあない、
各々もまた離れ離れになっていたワケで。
同じ海賊団の仲間同士となって、
一番付き合いの長い間柄の最初の二人でさえ、
一緒にいた期間、1年経ってたかどうかという長さだったところへ、
その倍以上をばらばらに過ごしたことになり。

 「そんでも集まっちまうところが、俺らの絆の堅さだよな。」
 「つか、情の深さっていう感じ?」

小さくて愛らしい姿は ちいとも変わらぬ、
いやさ、以前よりも屈託ない無邪気さが増してないかという、
トナカイドクターさんが嬉しそうに言ったのへ。
こちらさんは結構な逞しさを得て戻って来た、
長鼻の狙撃手さんが にししと笑って付け足したのへ、

 「そうよねぇ、何たって。」

あたしたちが付いてなきゃ、
どこへ首突っ込んで何しでかすか判らない船長なんですものと。
だから捨て置けなくてなんて言いようをしたのが、
ずんと熟した肢体も魅惑的なれど、
中身は…やっぱり以前と同じく快活な航海士さんで。

 「何だ何だ、あいつぁ前からあんな無鉄砲野郎だったのかよ。」

仲間に加わった時期が早い者ほど、
壮絶な冒険やら苛酷な戦いやらを、
彼と共に乗り越えた場数も多く、
そこで一緒に揉まれてますますの成長を成したという勘定になるのだが。
それを言うなら、
後から加わった顔触れは顔触れで、
敵や環境のレベルも上がった、
苛酷な道程の中で袖擦り合ったことになるがため。
世界政府の秘密兵器、
殺人を含む制裁許可を持ってるも同然というほど、
辣腕だったCP9を叩きのめした死闘ののち、
信頼結んでの仲間入りしたクチとなろう、天才船大工さんなぞは、

 「やれやれ、こりゃやっぱり
  すーぱrーな技術をあれこれ収穫して来て、
  オレ様、大正解だったな。」

どこぞかで様々な研究を吸収しもしたのだろうが、それよりも。
そもそも、結構な改造っぷりの躯をしていたその上へ、
ますますの大改造を施した身となって帰って来た頼もしさであり。

 「俺も俺も、
  皆がどんな怪我をしたって大丈夫なように、
  色んな万能薬を勉強して来たぞ!」

 「そ〜れは頼もしい♪」

小さなお手々を振り振り、任せろと豪語する小さなドクターさんへ、
節をつけての激励する、
寸前まで世界的な“あーちすと”だった骸骨の音楽家さんが、

 「ああでも私、皆さんと同じ怪我のしようがないのですが。」

相変わらずのスカルジョークを繰り出している主甲板を、
見下ろす格好になる階上デッキにては。

 「それにしても、可愛らしいお洋服だこと。」

こちらさんもますますのこと、
その知的な風貌の中へ、
ミステリアスな妖麗さを香(かぐわ)しくも増した考古学者のお姉様が。
出港したばかりという興奮もどこへやら、
はんなり微笑って褒めたのが、
再会かなった船長さんがまとっていた衣装を指してであるらしく。
これからの冒険への期待を胸に…という次元とは到底思えぬ落ち着きで、
そんなお話に関心が移っている辺り、
さすがは年の功というべきか。
……あ・いや、他意も含みもありませんので、
フルール系クラッチはご勘弁を。

 「んん? これか?」

お褒めの言葉をいただいたご当人はといや、
あらためて自身の身をキョロキョロと見回すと、
ひらひら軽やかなシャツのことらしいと気がついて、

 「これはマーガレットが作ってくれたんだな。」

満面の笑顔で“やはは…vv”と笑い飛ばしたのは。
自分へと“可愛い”が降って来たんじゃあなく、
仲のいいお友達のお裁縫とかセンスとか、褒められた気がしたからか。
麦ワラ海賊団の船長、屈託のなさが相変わらずならば、

 「ぬぁんだとォ! 誰だ誰だ、そのマーガレットちゃんとやらわっ!」

出港時に他の仲間の様々なゆかり人らを見たおり、
あまりに美人な女性陣が多かったゆえ、
そのまま本気の貧血起こしそうなほど鼻血を吹いたのも、
もはや忘却の彼方なのか。
明らかに女性名があっけらかんとこぼれ落ちたの、
過敏にも拾い上げちゃったシェフ殿で。

 「誰って…」
 「いんや皆まで言うまい。」

自分から訊いといて、なのに そんな言いようをし。
たばこを指先へ挟んだ手を額前へとかざし、
何ともシリアスにお顔を伏せがちにして構えると、

 「貴様はあんな可愛い子ちゃんらに、
  こ〜んなところへまで世話焼いてもらってよ。」

ああ、声も斜に沈んどるなと。
彼もまた相変わらずらしい、コックさんの女性への感受性へと、
遠目にでも判るのか、
主甲板にいる顔触れが肩をすくめたのが見えたらしく。
そうみたいねと、
こちらでも考古学者のお姉様が楽しそうに苦笑をし。

 「あんまり一緒にいた訳でもないんだがな。」

微妙に勘違いをされてるようなのは判るのか、
そこもまた馬鹿正直な船長さんが彼なりの訂正を入れたもんの。

 「そっちの低能筋肉頭も、小じゃれた恰好しとるしな。」

  あの、ペローナちゅあんに見繕ってもらったんか
  あほう、城に山ほど古着があっただけだ
  城だぁ? そぉんなロマンチックなところでお前はよ〜
  あんのホロホロ女、家事は何も出来んぞ、言っとくが
  出来んことを確かめたんか、貴様〜、と

ヤケにつっかかるのが、
サンジなりの“懐かしいな、おい”表現かもと。

 「……しょうがねぇなあ、まったく。」

こちらもまた、相変わらず微妙に斜めに外してのこと、
くすぐったげな苦笑と共に やれやれと肩をすくめた船長だったのを。
意外な成長ととるか、
いやいや方向音痴さは ちいとも変わってねぇととるか。


   何はともあれ、お帰りなさいっ!






   〜Fine〜  2011.12.17.


  *しつこく“出港編”ネタ(しかも捏造)ですいません。
   関西地方では
   この日曜にやっとルフィがサニー号に辿り着き、
   万感の想いを乗せての出港ですんで、つい。
   サンジさんだけを おちょくってるようで、そこもすいません。
   女性に最も疎い顔触れに
   女っ気があったのが何か絶妙だなとか思いまして。
(笑)

   あ、でもゾロって基本
   “女性は庇ってやらんと”という思考があると思う。
   つか、あの大切な思い出の真ん中にいる親友が、
   ああまで強かったのに
   女だからという点へ唯一悔しがってたのが忘れられなくて。
   あいつほど強くもねぇくせに、
   そう簡単にその枠から出て来んじゃねぇ…とか思っているのかも?
   そして、存外したたかな海の女性らに
   時々 手玉に取られてるところなんかは
   ロマンチック風味じゃないとはいえ、
   某サンジさんと似たようなもんかも…。(おいおい)

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